「須山口登山道」は、須山浅間神社を起点として、富士山頂に到るルートでした。宝永大噴火の後、使われなくなっていましたが、地元の方々が「富士山須山口登山歩道」として再興しました。
腰切塚は富士山の側火山の一つです。頂上にある展望台に立つと、迫力ある宝永火口と、雄大な富士山とを間近に望めます。
富士急モビリティ: 御殿場駅 → 浅間神社入口 富士急モビリティ: 御殿場駅 ← 水ヶ塚公園
地図: 須山浅間神社 , ヤマレコ
天気: 富士山頂 , 宝永山 , 御殿場口新五合目
レポ: 富士山(須走ルート) , 宝永山 , 御殿庭
11月3日(祝・月)、富士山の須山口登山歩道を歩いてきました。裾野市の須山浅間神社(0合)から水ヶ塚公園付近(1合)までの、ほぼほぼゆったりとした登り道です。特徴は道標とピンクテープの多さ。そのおかげで、踏み跡の不明瞭な場所も、少しも迷うことなく、安心して歩けました。最後に時間が余ったので腰切塚に登ってみると、図らずもそこで最高の時間を過ごすことになりました。
紅葉の季節に富士山をごく間近に望んでみたい、と思ってから何年経ったでしょうか。今年は、「行きたい!」という思いがこれまでになく募りました。富士急モビリティの登山バス最終運行日は11月3日。そこで、晴天の特異日でもある「文化の日」を実行日と決めました。その日が近づき、tenki.jpの天気予報を見ると、前後の日も含め、今年も「晴れ」。諸々の要件も整い、あとは行くばかり。晴天だとは言え、ハイキング用の耐久雨合羽も忘れずにリュックに入れました。
御殿場駅で電車を降りて「富士山口」から出ると、輪行の若者が自転車を組み立てていました。慣れると5~10分で組み立てられるらしいです。私はまず、バス乗り場の位置を確認。そこから富士山を見ると、頭に小さな白い雲がかかっていました。あの雲は小さくなるだろうか、大きくなるだろうか? ここまで来たからには、行くしかありませんが、気にはなります。まだ30分近く時間があったので、静態保存のSL、D52を見に行きました。SLの巨大な動輪が特に好きなのです。
8時30分発の十里木行きバスに乗ったのは、1人の外国人女性の他に、私を含めてハイカーが10人ほど。一般の路線バスなので、バス停が頻繁にあります。「浅間神社入口」で降りたのは私だけ。皆さん、愛鷹山に行くのでしょうか? 私はバスを見送り、須山浅間神社に向かいます。道標がしっかり立てられているので、地図を見なくても大丈夫。まずは駐車場のトイレで用を済ませておきましょう。午前9時、広い駐車場に、車はゼロ。トイレはとてもきれいでした。
浅間神社の赤い大きな鳥居は、意外にも道路から下がった小川のほとりにありました。ご神木と思しき杉の巨樹が聳え立っています。全部で20本ほどあるでしょうか。石段を上ると、全身白装束の女性が何かしていて、神域に入った心地になりました。拝殿で、きょうの登山の無事を祈願します。戻って石段を下りると、手水場の足下に花手水がありました。美しい宇宙を想わせるアレンジメントです。赤い鳥居の下にはアキアカネ。きょうは好い日になる予感がします。
きょうの山行は須山浅間神社が起点です。鳥居の前でヤマレコアプリを起動し、「登山を開始」しました。これから裾野市の道標に従って、「富士山須山口登山歩道」を忠実に歩いていきます。快晴ですが、富士山の雲は大きくなっていました。一旦、国道469号を歩き、「渕」バス停を左に見たら、右折して農道に入ります。平坦な更地(?)のような緑地が何枚もありますが、何に使うのでしょうか? 日当たりは好く、うす紫の野菊にハラナガツチバチ。ひたすら長閑です。
白い水道タンクを右に見てすぐ、広々とした平地に出ました。ここで小休止。少し汗ばんだので、上着を脱ぎました。コンビニで行動食として買った「スティックメロンパン」(6本入)を1本食べます。いくぶん動きの良くなった体で引き続き進んでいくと、深い杉林に入りました。ここで「森の力を再生します!」という看板が目に止まります。林床まで日差しが届き、下草がたくさん生えた、健康そうな杉林。針葉樹の植林であっても、こういう森は好きです。
10時丁度、車道に出ました。斜め向かいに登山歩道が続いています。歩いてきた道を指す「須山口下山歩道」の標識にも初めて気づきました。腕木の先が赤く塗られているので、はっきり登山歩道と区別できます。以後、登山歩道と下山歩道の2標識を、ほぼセットで見ることになります。この車道を越えると、苔に覆われた平地があり、動物の糞尿のような臭いがしました。その後、未舗装の林道(?)を少しだけ歩き、10時30分、ようやく杉林を抜け出ました。
目の前に富士山がドーン。早速カメラを向けると「電池残量がありません」と来ました。すぐに電池(単三型エネループ4本)を交換しましたが、全く動きません。フル充電してきたはずなのに、どうしたのでしょうか? あれこれやっても電源が入らないので、これ以降はスマホで撮影することになりました。歩行ログ記録用の、SIMなしiPhone8です。描写力はカメラ(Coolpix B500)と比べるべくもありませんが、無いよりはマシ。モバイルバッテリーを接続してやります。
そこは「牧場入口」バス停のすぐ近くでした。ヤマレコの地図では「忠ちゃん牧場」です。すぐ先で国道469号に合流し、さらに50mほど先で右折して「富士裾野ビクトリーロード」なる道に入りました。大きな看板に「東京2020オリンピック自転車競技ロードレースの開催会場」と書いてあります。この道はススキ原に沿う、開放感のある道路で、富士山と愛鷹山の越前岳を望めます。ところが前方から車が猛スピードで走ってきました。怖っ! 歩行者は逃げ場のない道です。
そのビクトリーロードを20分ほど歩くと、「富士山遊歩道入口」に到りました。よく整備されていて、とても歩きやすい上、右前方に富士山を望める設計です。今は残念ながら、増々大きくなった雲が富士山を隠していました。宝永山はギリギリ望めます。他方、左側の広葉樹林は、いい感じに色づき始めていました。鳥を撮影する人々が、鳴き声のする方を見ています。この道は日当たりが好く、ツマグロヒョウモン(蝶)の♂たちと♀たちが飛び回っていました。
富士山遊歩道を30分ほど歩くと、左手(用沢側)の川岸に沿って、ミニ草原がありました。楽しそうな道なので、ちょっと歩いて見ます。富士山を見上げると、雲の中に小さな円い窓が開き、山頂が少しだけ見えました。雲は山頂よりもずっと手前にあると思われます。やがて遊歩道が終わり、また車道に出ました。そしてまた直ぐ右の森林に入るのですが、右を指す道標に「弁当場」と書かれています。弁当場はきょうのコースの中間チェックポイントです。
11時34分、弁当場に到着。「弁当場の今昔」という説明板によると、源頼朝が催した大規模な巻狩の時の炊事場だったそうです。須山地域では貴重な水場で、今でも生活用水の水源となっているとのこと。苔生した水飲み台がありますが、野鳥用なのか、「飲料用ではありません」と書いてあります。その下には、「クマ出没注意」とも。そう言えば、きょうは熊鈴を忘れてきました。どうか熊と出遭いませんように.....。
弁当場より先で、中小の岩石がゴロゴロした道になりました。ここまでの道がとても歩きやすかったので、少し歩きにくく感じますが、特に困難はありません。弁当場から20分ほど歩くと、道が左に折れ、斜面を少し登って平坦な林に入りました。落ち葉のために踏み跡が不明瞭ですが、この辺りからピンクテープが頻出します。ピンクテープを追っていくと、薄い踏み跡が続いているのが分かります。ピンク色は見つけやすく、目印としてはいい色だと思いました。
涸れ沢を越える個所がありました(1回目)。 水があれば、渡渉になります。対岸に上がると、コースが俄然ワイルドになりました。落ち葉の積もった斜面をトラバースしていくのです。この日は落ち葉がカサカサに乾いていましたが、雨後など葉が濡れているときは要注意でしょう。そんな道を15分ほど行くと、道が涸れ沢を渡り返していました(2回目)。ここは涸れ沢に下りる階段があるのですが、下部で崩落しています。
無事、対岸に上がると、青空を背景に、きれいな紅葉と黄葉が輝いていました。天に祝福されているような気分になります。道は再びのどかになりました。赤紫色のホオノキの実を拾ったり、アカスジキンカメムシの幼虫を撮影したりと。程なく、左手の空間が開けて、フジバラ平に到着しました。山中にオアシスのような池があり、空を空よりも青く映しています。休憩の好適地ですが、ベンチやテーブルはありません。立ったまま、おやつタイムにしました。
フジバラ平の先で道の斜度が増しました。初めて土止め階段が現れます。やがて道が遊園地「ぐりんぱ」に接近すると、その後の道すじが複雑になりました。ゴルフボールがたくさん落ちていますが、飛んできて頭に当たると、どうなるでしょうか? 観覧車のすぐ北、白菊の多い直線部を通過中に雨が降り始めました。空には黒雲、富士山にも黒雲、気が滅入ります。濡れると体力を奪われるので、雨合羽を着ました。道筋はますます複雑になり、ひたすらピンテが頼りです。
30分ほど降って、雨が上がりました。たちまち青空が戻り、木々が輝き始めます。こんなとき、脳内を流れるのは交響曲「田園」の第五楽章。紅葉・黄葉を愛でながら、軽快に足が進みます。付近に誰もいないのをいいことに、「晩秋の頃」を口ずさみました。♪茜や、金色、落ち葉の道...♪ そして最後にトラロープをまたいで、車道に飛び出しました。水ヶ塚は左方向です。ここで、うれしや、富士山の勇姿! 黒雲は離れつつあり、代わって白い雲が吹き出ていました。
14時10分、須山口登山歩道の「上り1合」に到着しました。ここは、この夏に御殿庭を訪ねたときの出発地点です。須山浅間神社を発ってから、ほぼ5時間。道中のルートファインディングが、ピンクテープと道標のおかげで、予想外にスムーズでした。次のバスまで時間があるので、腰切塚に登ってみましょう。水ヶ塚公園からは至近距離にあります。公園の広い駐車場を通り抜けて行くと、たくさんの車がありました。車の皆さんは、どこに行ってるのでしょうか?
腰切塚の登り口から7分ほどで、展望台に至りました。さっそく上っていくと ... 富士山が全身で迎えてくれました。きょう最大の感動を覚えます。私も全身全霊で富士山に向き合います。この大空間は、今手にあるスマホでは1枚の写真に収まりません。ぐるり360度、双子山、丹沢、箱根、駿河湾を順次見渡しました。富士山側の黒い大きな雲は、ゆっくりと手前に流れてくるようです。しばらく待てば離れるかもしれません。その時間を使って、お鉢巡りに行きました。
お鉢巡りを終えて展望台に戻ると、黒雲がどんどん白く変わっていくところでした。その影が宝永山に映って、美しい縞模様になっています。そして別れの時が近づくと、完全に陰を払った富士山が、最高の美を見せてくれました。
御殿場駅行きのバスは、今季最終便。静かに走る電動車(EV)です。心地よい座席に身を沈め、幸せなバスの旅を楽しみました。御殿場線の電車もまた、座席が前向きで快適、色はグリーン。もちろん普通車です。ロングレールの区間限定ですが、とても静か。新松田で乗った小田急も余裕で座れ、帰宅するまでに足腰が癒されました。きょうもすばらしい一日を与えられ、無事に帰れて感謝です。
Alt + < = 戻る。 Alt + > = 進む。 了解