鷹取山は、神奈川県逗子市と横須賀市にまたがり、その下を高速道路が貫通しています。三浦半島のほぼ中央という好位置にあって、山頂の展望台からは、360度のパノラマが望めます。
鷹取山と神武寺とをつなぐ道は、神武寺鷹取山ハイキングコースとしてよく整備され、手軽に歴史と自然とに触れることができます。
地理院地図:鷹取山
鷹取山の天気:神奈川県横須賀市
クリスマス日曜日の翌日、三浦半島方面に所用で出かけた際、鷹取山を経由して行きました。厨子中学校から神武寺に至る、静かな谷沿いの散策路は、まだ鮮やかな紅葉を残し、小鳥やリスとも出会えました。また鷹取山頂の展望台からは、富士箱根方面、相模湾、東京湾を広く、気持ちよく望むことができました。
午前10時半、京浜急行神武寺駅から歩き始めました。はじめ線路沿いに金沢八景の方向に歩いて行きます。右前方に見えるのが鷹取山でしょう。展望塔のようなものも見えます。逗子中学校の手前の信号機で右折。逗子中正門前とテニスコートの横を通り過ぎると、地域福祉協会の敷地をかすめながら、苔むした岩の多い谷間に入って行きます。
散策路が右に曲がって、小さな沢沿いに登って行くあたりは、もう既にひっそりとした森の中。ところどころに色鮮やかに残る紅葉。樹木や草が生い繁った、やや隠れ谷の雰囲気ながら、高みから逆光気味の明るい陽光を受け、岩の苔まで輝いて見えます。ああ、来て良かったなあと思いました。
少し登ると、竹箒が置いてあり、落ち葉の山が築かれていました。誰かが掃除をしてくれているのです。その先で石段になり、広い尾根の上に出ました。「神武寺鷹取山ハイキングコース」と書かれた道標が立っています。ここはすでに神武寺の境内なのかもしれません。行く手に簡素な瓦屋根の門があります。夏は神武寺の境内でケイワタバコの花が咲くそうです。
神武寺の晩鐘は、「三浦半島八景」と、「逗子八景」とに選ばれています。夕方、赤い夕日を見ながら、その鐘の音を聞いてみたいものです。鐘楼には、「時鐘の為、鐘をついてはいけません。」と書かれた板が取り付けてありました。できれば、「鐘を撞きたい人は、何時何分までにここに来てください。」と書かれていたら嬉しいのですが、お寺にはお寺の事情もあることでしょう。
本堂は、一般者の立ち入りが禁止なので、上から眺めるだけ。その先、ずらり並んだ赤い頭巾とエプロン姿のお地蔵様六体にご挨拶をし、石段を昇って「醫王山」と書かれた大きな門をくぐります。その奥には絵のような薬師堂が、きまり良く控えていました。
境内にある「なんじゃもんじゃの木」は、説明板にホルトノキだと書いてあります。はじめ何の木か分からなくて、「なんじゃもんじゃの木」と呼ばれたのだそうです。樹高20m、胸高周囲2.8m、樹齢約400年という、その木を真下から見上げたら……大空に何本ものくにゃくにゃと曲がった枝を伸ばして、ひょっとすると、人が見ていないときは動いているかもしれない、などと想像してしまいました。
薬師堂の裏手の高い木の上から、「カタカタカタ」という音が聞こえましたが、何の音か分かりませんでした。幹や枝を上り下りしているリスは、おそらくタイワンリスでしょう。
薬師堂に向かって左手の道を登って行くと、古い朽ちかけた道標があり、マーカーで矢印と「三角点」の文字が書き添えてありました。好奇心に促されて、ガサガサと笹むらに入って行きます。1分ほど歩いたか歩かぬうちに、三等三角点に到着。南側の展望が開けていて、二子山と阿部倉山が良く見えました。
ハイキングコースに戻ります。引き続き鷹取山に向かって進むと、富士山と箱根の山々が見える岩にやって来ました。残念ながら雲があって、あまりくっきりとした姿ではありません。でも寒い冬の早朝には、すばらしい眺めになることでしょう。手前には、青い相模湾が望めました。
そのすぐ先の岩に、「日本道路」と刻まれた小さな石柱が立っています。これは日本道路公団が、鷹取山の下にトンネルを建設するために立てたものでしょう。この石柱の真下を、横浜横須賀道路という高速道路が走っています。
これより、ちょっとした岩場がところどころに現れます。ロープ場やクサリ場もあります。ハイキングの安全と安心のための設置です。右手に、鷹取山頂の展望台が間近に見えてきました。
展望台へは右手から巻く道を進んで行けばよかったのですが、私は直登する道に入ってしまいました。高度差はごく僅かですが、若干険しい箇所もあるのでお子様向きではありません。また山頂に着くと、そこはフェンスの外なので、内側に入らねばなりませんでした。幸い、フェンスに隙間が設けてあります。大人一人が通るにはちょっと苦しいような狭い隙間で、リュックを持ち上げて通り抜けました。
展望台に上ると、期待通り周囲360度の広大な眺望が待っていました。残念ながら富士山は、先ほどよりもさらに雲が増えていました。でもここは、山よりも海を眺める展望台と言えるでしょう。とりわけ横須賀の海と東京湾は、障害物も少なく広々と見渡すことができます。
展望台の下の広場に下りると、岩登りをしている人たちが見えました。鷹取山は、かつての採石場が遺跡のように残っている山です。垂直に切られた岩壁には、クライマーたちが打ち込んだハーケンの穴がたくさん開いています。今はハーケン・カラビナの使用はできなくなり、登攀も登録制になっているそうです。素朴な水仙の花も、師走に咲けば三浦半島の風物の一つ。どこからか新春の歌が聞こえそうな公園でした。
磨崖仏(まがいぶつ)を見たかったので、下山路は、追浜(おっぱま)駅方面に取りました。磨崖仏は弥勒菩薩尊像で、昭和40年頃の作だそうです。古い遺跡のように鼻や指が欠けたりしていません。優しく微笑みを浮かべた、ふくよかな顔。この仏像は、市街地の方向ではなく、鷹取山の方を向いています。
追浜駅へ行くには、磨崖仏に向かって左側の狭い小道を通り抜けます。ここは、映画のセットのような趣を感じます。その先、「海の見える街(アニメの主題歌?)」を髣髴させるような、見晴らしのよい回廊を経て、石段を下ります。車道に出たら緩い坂を道なりに京急線の踏切まで下りますが、最も広い道を選んで歩けば迷うことはありません。磨崖仏から追浜駅まで、自ずと早足ぎみに歩いたのですが、約20分ほどの道でした。また機会があったら、花や虫の見られる季節に来たいと思います。
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